酉の年の「初釜」。

ドナルド・トランプが、滔々合衆国大統領と為った。

これだけブーイングの起こった就任パレード、これだけ観衆の少ない就任式、これだけ世界各地で就任式前から起こる抗議デモも珍しいが、結局DCに来ないタイプの人達が投票したのだろうから、特にセレブ達の抗議活動に対しての「選挙をしたばかりじゃないか。君達は選挙に行かなかったのか?」とのトランプのツイートは、民主主義の鉄則に乗っ取った余りにもマトモな発言だった。

民主主義の限界を目の当たりにする話だが、かと云って既に「ツァー」(皇帝)化して居るプーチンの方が良いのか?、と云われると答えに困る…が、何度も此処で云って居る様に、何れにしても国民が自分で直接選んでの結果だと云う事自体が、我が国より真っ当で羨ましいと云う他ない。その意味でトランプは、現日本国首相より大分マシ、と云うか我慢すべき存在だと云う事だ。

TPP中止の大統領令も出されたが、さて我が国首相、大丈夫かな?

さてそんな中、選挙権の無い永住権取得者たる僕はと云うと、先ずはニューヨークでの友人達との新年会。チェルシーの「B」に集まった建築家J&K、Jの新婚妻のAちゃん、ファッション・ブランド・デザイナーのT、写真家G、ジェエリー・デザイナーのAちゃんと、乾杯と美味いイタリアンを堪能。

その後は二次会で系列の「BB」に向かい、「B」であれだけ食ったにも拘らず皆で超ウマの「メンチ」に齧り付いて居ると、ジュエリー・デザイナーUと彼女のヘア・デザイナーRちゃん、そしてサウンド・クリエイターのSが登場し、再び乾杯の嵐…皆さん、今年も宜しくお願いします!

数日後、僕は重要業務の為に西海岸へ3日間の出張へと出掛けた。某コレクションに興味の有るバイヤーと共に、倉庫で作品を確認する為だ。結局、2日間に渡り200本近い掛軸を開けたり閉めたりした訳だが、掛軸の性質上これは謂わば「スクワット」をした様な物で、足腰の筋肉痛が凄く、其処は彼と無く年を感じる(涙)。

そして西海岸から、再び日本へ…然し、東海岸から西海岸に寄って日本に来ると云う旅程を、大概の人は「あぁ西海岸寄って来るんだ」とか「丁度途中だし…」とか云うのだが、それは根本的に誤り。NYー東京の直行便を考えると物凄い遠回りをする訳で、時差も「−3時間」を経験した後に「+17時間」と為るので、キツイ事極まりないのだ。

そんなこんなで大時差ボケの中成田に着き、恒例の神田明神参拝を済ませて家に帰ると、ノックダウン。が、時差ボケ唯一良い点で有る早起きを利用して、翌朝僕が向かったのは千駄木…若宗匠からお誘いを受けた、武者小路千家官休庵・東京道場の「初釜」で有った。

素晴らしい天候の下、僕が伺った初釜二日目の朝イチの会では、旧知の骨董数寄の邦楽家元とご一緒…こう云った席で知己が居るのは、本当に心強い。

先ず通された薄茶席では、酉年に因んで床が将軍の鳥の絵だったり、主茶碗が黒楽「飛び込み鶴」、蓋置が「エッグスタンド」だったりと軽快な感じだったが、言祝ぎ感が有って初釜らしい。また点茶をしたのがS氏で、お運びにもM氏やN氏等旧知の方が登場し、普段中々お目に掛かれ無い方々とも新年の挨拶を交わす事が出来、これも幸甚。

そして濃茶席は大広間。床には武将茶人の詠歌が掛かり、主茶碗は大振りな堅手三つ足割高台。然し最も僕の興味を惹いたのは、釜…素晴らしい味の天明釜だが、利休所持、然し話は其処で終わらず、表面に何と「利」と「易」の文字が、利休の書体で打ち出されて居る。

そんな佳き道具で美味しい濃茶を頂き、その後点心を邦楽家元と頂戴すると、これから三ヶ所掛け持ちだと云う彼と駅迄ご一緒し、時差ボケを吹っ飛ばす清々しい空気を2人で吸いながら、そして今年が良い年で有る様に祈念しながら、3月の約束をしてお別れをした。

酉年は実り多い年で、果実が成熟する年でも有ると聞く。そして酉年の守護仏は…「不動明王」!

その昔、アーティスト天明屋尚氏に自画像を頼んだ筈だったのに、暫くして出来て来たのが「ネオ不動明王」だっと云う由来を持つワタクシ、大仕事が多く為る今年も「ご縁に感謝しながら、頑張ろう!」と心を新たにした、誠にケッコー・コケコッコ〜な酉年の初釜と相成りました。


−お知らせ−

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、2017年1月21・24・30日の3日間、渋谷のアップリンクにてリヴァイヴァル上映されます(→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014)。奮ってご来場下さい。