夏の終わりのクルーズと「テルマエ」の到来、そして「コロンブスの発見」。

酷い時差ボケで、体調がイマイチ良くない。

そんな時差ボケの所為で早く起きてしまった朝、ケーブル・テレビの日本語放送でやっていた某都知事出演番組を見たら、益々気分が落ち込んだ。

その理由は、都知事の「2020年東京オリンピック招致」に就いての発言で有る。

先ず彼は、「オリンピック招致の成功は、国民の総意や支持に掛かっている」と仰有っていたが、オリンピックは「都市開催」なので、東京都民の総意を先ずは考えるべきだろう。その都民の支持率が低いが故に、そう云ったのだろうが…。

また「オリンピックは、国の事業」と云うなら、個人的には、これから東アジアの核都市と為るべき「福岡」でのオリンピックを強く期待する。云う迄も無く、福岡市はインフラ・治安とも対抗都市に勝っているし、集客のポテンシャリティも抜群だと思う。

次に「あのパレードは僕が企画した。あのパレードに来た観衆の多さが、国民の東京オリンピック待望の証だ」と仰有っていたが、果たしてそうだろうか?彼処に「都民」がどれだけ居たか分からないが、あれはメダリストを見に行ったので有って、五輪招致待望の総意でも何でも無いと思うが…。

更に対抗都市のマイナス・ポイントとして、例えばイスタンブールの「治安」、マドリッドの「経済」を挙げて、「どちらも8年後が見えない」とアッサリと結論付けていたが、筆者が今回の東京招致に関して何よりも一番引っ掛かっていて、番組のキャスターや解説委員、共演者の誰も口に出さないのが、「福島」で有る。

日本国を挙げて1年半掛けても、一切フィックス出来ていない「福島第一」から距離的にあれだけ近い東京が、そして今更の様に活断層再調査中の地震国日本の「8年後」が、イスタンブールよりも安全だと云うその根拠は一体何なのだろうか?

日本国として、また東京都としては、せめて「福島第一」が完全に復旧し、今一度「大地震が起きても絶対に大丈夫」と云う確証と自信を得てから、立候補すべきでは無いかと強く思う。

開催都市が東京に決定してしまった後、再び大地震が起きたら、若しくは「福島」に何か起きたら、一体誰がどう責任を取るのだろう?大体、80前の高齢の都知事御自身、今後8年間御存命かどうか分からないのに、で有る…「8年」と云う年月は、短い様で長いからだ。

そして何よりも、「福島」の電力に最も依存している東京都が、大変な量の電力を使用すると予想されるオリンピック招致に際して「福島」に全く触れないのは、世界からオリンピックに参加する選手や見に来る人々に対して、余りにも無責任だと思うが、如何だろうか…?

さて、筆者に取ってそんなイライラと時差ボケを直す方法は、唯一「寝てはいけない時間に『寝ない』」事だけなので(笑)、夕方近くに為って頭がクラクラして来たら、外に出るに限る。

てな訳で「外に出なければ!」と思っていた矢先、友人の現代美術家インゴ・ギュンターから来たお誘いは、彼のボート「アクアホリック号」での、この夏最後のクルーズ…ううむ、渡りに舟たぁ、この事だぁ!

クサマヨイと友人のミュージシャンMさんを誘い、何時ものPier 40に集合…都合14人の乗客を載せたアクアホリック号は、ニュージャージー側に沈んでいく、恐い程に美しい夕陽に向かって静かに出航した。

前回のクルーズは、インゴとの合同バースデー・パーティー・クルーズだったのだが(拙ダイアリー:「Absolutely Stormy !」参照)、その文字通り「嵐」だった晩と到底同じとは思えない静かな水面や、「1 WTC」と隣のビルの間から雲一つ無い夜空に登り、漆黒の闇の中燦然と輝きながら光の帯をハドソン河に映す月、そして頬を擦る秋を感じさせる涼しい風…夏に別れを告げる、至福のクルーズで有った。

そんな秋の気配も感じるニューヨークは、現在「Labor Day Weekend」の連休中…先日東京で一緒にお食事をさせて頂いた漫画家のヤマザキマリさんから、「テルマエ・ロマエ」全4巻+「『テルマエ・ロマエ』オールスターズ・てぬぐい」が送られて来た!

実は、先日ヤマザキさんにお会いした時には(拙ダイアリー:「『古代ローマ晩餐』と『木守』」参照)、何を隠そう、機内で観た「映画版」と、東京オフィスの同僚に借りた「第1巻」と「第3巻」(この同僚、2巻と4巻は従姉妹に貸したらしい…しかし、何故「2と4」なのだろう?:笑)しか読んでいなかったので、それを正直に告白したら、キップの良いヤマザキさんが「送りますよっ!」と云ってくれたので有った。

あぁ、有り難や、有り難や…これからジックリ読ませて頂きます!しかし、この全4巻の「表紙イラスト」、何度見てもマジに素晴らしい!現代美術として見てもかなりのクオリティで有る…ウーム、欲しい!

そして昨日の夜は、友人で「ニューヨーク・アート・ビート」ファウンダーの藤高晃右君から、「インスタレーション・アーティストの西野達氏と食事をするので、良かったらご一緒に」と、彼のブルックリンのお宅にお呼ばれ。

西野氏は今月20日から、コロンバス・サークルで「Discovering Columbus」と云うパブリック・インスタレーションを開始する。このプロジェクトは、地上6階位の高さに有る「コロンブス像」を囲んで、「リヴィング・ルーム」を作ってしまおうと云う物で(ニューヨーク市は流石に厳しく、「ホテル」には出来なかったそうだ)、西野氏が過去に手掛けた「マーライオン・ホテル」や「ホテル・ゲント」の流れのプロジェクトだ。

ドイツに住んで20年、実年齢より軽く10歳は若く見える「達さん」は、会ってみると本当に気さくな方で、ヤマザキさんもそうだったのだが、長い間外国に居る日本人は、何故こんなにも気取らずオープンなのだろうと何時も思う。

今迄の作品の話や、アーティストに為ったきっかけ、今回のプロジェクトでのブルームバーグ市長やニューヨーク市の話、好きな女性タレント(これは、聞いてマジに吃驚した!)や最近されたと云う結婚の事迄、ワインを飲み晃右夫人アネタの作った美味しい料理を頬張りながら、達さん、晃右、アネタ、(歩き始めた)花、クサマヨイ、筆者の「5 1/2人」は、遠くに自由の女神やツイン・タワーを眺めながら、大変楽しい一時を過ごしたので有った。

空中に浮かぶ「居間」の中で、「コロンブス像」を「発見する」のを待ち切れない!