色取り取りの、そして「銀色の風」:"Silver Wind: The Arts of Sakai Hōitsu"@ Japan Society。

もう「日常茶飯事」に為ったので、いちいち此処に記す必要も無い程飽き飽きして居るのだが、一応此処は「ダイアリー」なので触れておく。

今度は、ミネアポリスで銃乱射事件が発生した。

その動機は今回も職場をクビに為った腹いせらしいが、全くいい加減にして欲しい…この調子では、或る朝起きたら、例えばNBCの朝の人気番組「Today」に、「今週の乱射」とか「今日の乱射フォアキャスト」と云ったコーナーが出来て居るのでは無かろうか?(笑)

そしてこれも云い飽きて居るが、アメリカの闇は真に深い。

が、此処からは、アメリカ人が好きなのは実は「乱射」のみでは無い、と云う事実を記すのでご安心を(笑)。

さて昨日の夜は、ジャパン・ソサエティーで29日から始まる「Silver Wind: The Arts of Sakai Hōitsu (1761-1828)」展(→http://www.japansociety.org/event/silver-wind-the-arts-of-sakai-hitsu-1761-1828)の内覧レセプションへと出掛けた。

この展覧会は、JSのギャラリー・ディレクターだったジョー・アールの最後の企画展で、ゲスト・キュレーターに筆者の親しい友人でも有る、コロンビア大日本美術史准教授のマシュー・マッケルウェイを迎えた、かなり気合いの入った展覧会で有る。

現在丁度METでも琳派展を開催しているが、そんな事も有ってか、レセプションは大勢の人で大賑わい。珍しい顔としては、現在コロンバス・サークルのインスタレーションで大人気の達さんの顔等も有ったが、大多数の客は毎度お馴染みの顔ばかりで、年齢層もかなり高い…この辺が、JSのメンバーシップのこれからの考え処なのだろう。

が、この日のメイン・ゲストは勿論何時ものメンバー達では無く、全米のコレクター・美術館から集められた、光琳・抱一・其一等の琳派絵師の名品達だ!

今回のこの展覧会は、屏風や掛幅等の絵画、「光琳百図」等の版本、また印籠や団扇等の工芸品が出展され、それらを通して、大名絵師酒井抱一の画業を俯瞰しようと云う企画なのだが、さてその58点に及ぶ出展作の中での「筆者的『大目玉』」はと云うと、それはやはり並んで展示された、素晴らしい2点の「波濤図」だろう。

そしてその2点とは、1点は今回数少ない日本からの出展作の1つで有る、抱一作銀地墨画六曲一双屏風(静嘉堂文庫美術館蔵)で有り、もう1点とはメトロポリタン美術館蔵の光琳作の著色二曲一隻屏風。

この2点を比べると、何しろその違いが顕著で面白い。銀地に墨の効果も有るだろうが、抱一の波濤はまるで北国の冬の海(実際は、抱一が2ヶ月毎に詣でて居た「江ノ島」かも知れない)の様に冷たく荒れ、光琳作品のそれは、その筆致と色の違いからか何処か優しくさえ見える…2作品のコントラストが十分に楽しめる、流石の展示だ。

その他、筆者に取っては非常に懐かしい、抱一の師匠で有った浮世絵師の歌川豊春風な画風と、珍しい「屠龍」落款を持つ「立ち美人図」(ファインバーグ・コレクション蔵)や、羽衣フーズ蔵の美しく状態の素晴らしい「草花・流水図団扇」、そして「三十六歌仙図」や「花鳥十二ヶ月図」、「群鶴図」等の、異なる絵師若しくは同一絵師に拠る同画題作品の数々も出展されて居り、見比べる楽しみも尽きない。

また作品のレンダーも、上記ファインバーグやギッター、バークやフィッシュバーン、クラーク等の各有名個人コレクションや、5作品を貸し出したメトロポリタンやインディアナポリスクリーヴランドやMFAボストン等の名だたる在米美術館とバラエティに富み、レンダーの名前だけを見ても、如何に酒井抱一を初めとする「琳派」作品がアメリカ人に愛されて居るかが分かるだろう。

「銀色の風」のみならず、「色取りどりの風」をそよがせる琳派絵画を堪能できる本展は、来年の1月6日迄…この秋必見の展覧会で有る!