"Discovering Tatzu !"@Hell's Palace.

超忙しかった先週の土曜日は、先ずは午後イチからジャパン・ソサエティで開催されたシンポジウムへ。

このシンポジウムは、同ソサエティで現在開催中の展覧会「Silver Wind: The Arts of Sakai Hoitsu (1761-1828)」の関連イヴェントで、岡田美術館の小林忠館長、武蔵野美大玉蟲敏子教授の発表に、コロンビア大のシラネ教授と同大准教授で本展をキュレートしたマシューが加わってのディスカッションで構成される。

満員の会場で、数知れぬコレクター、美術史家、業界関係者への挨拶に明け暮れた後、シンポジウムはスタート。

そして小林、玉蟲両先生の示唆に富んだ発表とディスカッションの中でも特に興味深かったのが、抱一が使用した「銀地」と「金地」に関する話で有った。

シラネ教授の質問に対する玉蟲説の「銀」は「夜の月光」、若しくは表座敷の金に対する「奥座敷」の銀、この様な「金銀」使い分けと「銀地」自体の意味の推理は、知的楽しみ極まりない。

またもう一点挙げるとすると、それは小林先生が仰有った「もし寛政の改革が無ければ、抱一は指折りの『美人画浮世絵師』に為っただろう!」の一言だろう。

何故かと云うと、筆者は琳派の専門家でも何でも無いが、光琳と抱一の作品が一度に展覧会で並ぶ度に、抱一と云う人は光琳に対して、その出自に関して強い憧憬と嫉妬の念を持っていたのでは、と思うからだ。

ご存じの通り、光琳は豪商の長男で天下の遊び人且つ自由人、片や抱一は大大名家の次男で、幾ら俳諧に遊んでも、その行動には品が有り、自ずから限られる。そしてそれは光琳作品と見比べた時、抱一の作品に個人的に感じる作品上の真面目さや、ある種の面白味の無さにも見て取れる気がするのだ。

抱一は光琳の様に、自由人として身上を潰す程遊びたかったのでは無かったか?…だから出自と対極の浮世の絵師、歌川豊春門下に入ったのでは無かろうか?美術史の(勝手な)推理は、これだから止められない。

そして夕方、シンポジウムが終了すると、今度は大急ぎでクサマヨイに云い付けられた買い物をし、パーティの準備に取り掛かる…そのパーティーとは、我が庵「地獄宮殿」で開催された、"Discovering Tatzu" Party@Hell's Palace"。

さて、某有名俳優や国連総会開催中には某国大統領も秘密裏に訪れた(総会に出席した我が国の首相が訪れなかった事は、云う迄も無いだろう)、現在コロンバス・サークルでのインスタレーション・アート「Dicovering Columbus」…始まってまだ10日の、10万人の観客動員を目指しているこのプロジェクト、会期は11月半ば過ぎ迄だが、現在予約は6万人を有に超えているとの事。

そしてこの晩のパーティーとは、ニューヨークをベースにしている現代美術関係の友人達を呼び、最近このダイアリーにも登場している「Dicovering Columbus」のアーティスト西野達氏を囲んでの、「達さんを発見しよう!」と銘打たれた所謂「ニューヨークへいらっしゃい」的歓迎会なのだが、実際は単なるアーティストの飲み会と云って良い(笑)。

今回地獄パレスにやって来たゲストは、インスタレーション・アーティストのインゴ・ギュンター、次回開かれるブラジル・ワールドカップ・サッカーのポスターを製作し、この晩の為に人参を削ってコロンブス像を作り、「コロンバス・サークル」を云うサラダを持参したオスカール大岩を始め、近藤聡乃さんや斎木克裕君、砂入博史君、北出健次郎君等のアーティストからギャラリー・ディレクター、ギャラリストや大学院生迄のおよそ30人。

おつまみから始まり、ビーツ・サラダ、鳥の香味ダレ等を食べ、達さんと頑張ったクサマヨイに対する乾杯を経て、クサマヨイ渾身の最高傑作「ビーフ・ストロガノフ」(某アーティストは何と4杯も食べて、土産まで持って帰った!:笑)を頂くと、60を有に越えるワイン・ボトルやビールの空き缶の山を横目に見ながら、12時半頃からは残った15名程でテーブルを囲んでの、学生飲み会の様相を呈した。

そしてその主役は勿論達さんだったのだが、達さんに引っ張られたこの孫一、それからの2時間程と云う物、サービス精神旺盛な達さんと、殆ど「漫才コンビ」として観衆を笑わせ続ける羽目と為ったので有った…。

飲み会中、ゲストの中に嘗て「大声コンテスト世界第2位」だったアーティストが居たのが分かったりして、流石「ニューヨークには只者で無い人が多い」事実を再認識したが、そんな飲み会は午前2時半頃にやっとお開き。

お疲れの達さんは、結局クサマヨイに勧められた「ウコンの力」を飲んで、翌日の為、コロンバス・サークルに歩いていける距離の地獄宮殿に泊まったが、翌朝はクサマヨイ特製朝食を食べ、つまりは宮殿の「最上客」待遇と為った訳だ(笑)。

赤ワインを飲みながら誰とでもオープンに話し、笑いの絶えなかった前の晩の達さん、朝御飯を啜りながら、政治や教育、メディアや日本の文化レヴェル劣化等、シリアスな話をした達さん共に、それこそ真の意味での「Discovering Tatzu」な一夜で有った。

翌日曜日、流石に疲れて1日中家に居たのだが、夜買い物の為仕方無く外に出てみると、雲一つ無い空には満天の星…そよぐ涼しい風には、濃い秋の匂いがした。

気が付けば今日から10月で、今年も後3ヶ月…そしてニューヨークには、あっという間に冬がやってくる。