ニューヨークのギャラリー・シーンを引っ張るニュー・リーダー:新生「Sean Kelly」オープン。

今週末も、「Tatzu」三昧(笑)。

先ず金曜の夜は、タイム・ワーナー・ビルに付属する、コロンバス・サークルを見渡すアパートメント・ビルの51階に在る「One Central Park Club」で行われた、大富豪で「Public Art Fund」のボード・メンバーのシルバースタイン夫人主催の、現代美術家西野逹さんを顕彰するカクテル・パーティーにお呼ばれ。

物凄い夜景の中に、ポッカリと浮かび上がる達さんのインスタレーション「Discovering Columbus」は、会期の11月半ば過ぎ迄に既に12万人以上の予約が入り、目標の来場者10万人をクリアする勢いだ。集まった「リッチ」を絵に描いた様な人々の中で、120%浮き捲った我々だったが(笑)、流石に旨いフィンガー・フードを楽しみながら、逹さんの功績を皆で称えた。

そして昨日は朝9時(!)から、今度はジャパン・ソサエティが主催するギャラリー・ドナー達の為の、「Discovering Columbus」特別ツアーに参加。

此のツアーは、JSギャラリー・ディレクターの手塚女史と逹さんがガイドと為り、一般公開前の時間帯にギャラリー・ドナー・メンバーにゆっくりとインスタレーションを観て貰い、その後向かいの「MAD」(Museum of Arts and Design)の9階に在るヒップなレストラン「Robert」で、朝食会をすると云う企画…この企画は、アメリカ随一の茶人で有るペギー・ダンジガー夫人と、お茶に詳しいマーゴ女史がホストだったが、こう云った人々のアートへの飽く無きサポート精神には、本当に心から敬意を表したい。

そして我々地獄夫妻は、この会に参加する事に拠って、遂に朝・昼・夜の「コロンブスリヴィング」を経験・制覇する事に為ったのだが、驚くべきは上から眺めた、ニューヨークの秋の何とも美しい朝の光景で有る!

リヴィング」の窓から見える、黄や赤に色付き始めたセントラル・パークの木々、車の通りの本当に少ない道筋、窓から差し込み巨大コロンブス像を照らす、秋の朝の柔らかい陽射し…ニューヨークの最も美しい季節も満喫出来た、素晴らしいインスタレーション・ツアーだった。

その後は逹さん、クサマヨイと連れ立ち、クリスティーズの「版画」の下見会を観て、何時もの様に喋り捲りながら、軽いランチとワインを頂き、解散…逹さんは今日、ヨーロッパへの機上の人と為った。

さて此処で、話は金曜の夜に再び遡る。その夜我等地獄夫妻は、逹さんのパーティーに出席する前に、素晴らしい「アート・スペース」のオープニング・パーティーに出席して居た。

そのスペースとは、チェルシーから我々の住む街「ヘルズ・キッチン」に移って来た、コンテンポラリー・アート・ギャラリーの「Sean Kelly」。

マリーナ・アブラモヴィッチやジョセフ・コスース、ケヒンデ・ワイリー等のアーティストを有するこのギャラリーは、英国人ケリーに拠って1991年にソーホーで開業され、その後一度マーサー街での営業を経て、2001年からはチェルシーの29丁目に移ったが、この晩、36丁目と10番街の角に在る、1914年に建てられた歴史的ビルの1階と地下1階の、2万2,000スクエア・フット(約2,040平米)の巨大スペースへと移って来たのだ。

この付近、我が「地獄宮殿」の在る所謂ヘルズ・キッチン地区は、最近物凄い勢いで開発が進んでいて、ヒップなホテル「Yotel」や、フランク・ゲーリー設計の「Signature Theater」 を含むコンプレックス「MIMA」、地下に大盛況のクラブを有する、ニューヨーク初のアーバン・シティ・ゲイ・ホテル「The Out」等が出来たばかりだが、何しろこれから数年の間のこの地区の開発予定を知れば、この移転も頷けると云うものだろう。

その開発予定とは即ち、34丁目迄伸びる大人気の遊歩道「ハイライン」や、34丁目と11番街に新しく出来る「『7』ライン」の地下鉄駅、そしてその駅舎は今回「Sean Kelly」の新ギャラリーを設計した、建築家森俊子氏(元ハーヴァード大学建築学部長)が担当する。

そしてこの開発予定エリア「Hudson Yards」は、12エーカー(約4万8,500平米)に及ぶ「パブリック・オープン・スペース」や、2,600万平方フィート(約240万平米)のオフィス・スペース、2万世帯の住宅と200万平方フィート(約18万5,000平米)の商業用地、そして300万平方フィート(約27万8,000平米)のホテル・スペースを予定して居るのだから、只事では無い…ニューヨークの「新名所」の誕生はもう目前なのだ。

そんな先見性を感じさせる、森俊子設計の新「Sean Kelly」ギャラリーは、至ってシンプルだが、広々としたスペースは贅沢の一語。そしてオープニングを飾るアントニー・ゴームリーの「Bodyspce」展も、出色の出来のお得意の人体アート「Resort II」や「Clinch」、鉄の一筆書きと呼べる様な「Signal」等、流石の質の高い作品で観客を迎える。

その上、16フット(約4.9m)の天井高を誇るメイン・ギャラリー・スペース以外にも、地下のプロジェクト・スペースや「ブラック・ボックス・シアター」をも有する、新生「Sean Kelly」。

此れからこの「ハドソン・ヤーズ」地区のみ為らず、ニューヨークの新しいギャラリー・シーンをリードするで有ろう、必見のギャラリーで有る。