ハリケーン到来時に於ける、ニューヨーカーの「最大の危惧」に就いての考察:その2。

「サンディ」が去って行った。

思い返せば今回の事は、中身は大した事無い癖に(ハリケーンとしての「カテゴリー・レヴェル」は低い)、ブランド品で外見を飾り立てた(満潮や寒気等、他要素の複合化)、しかも日本人からすると「あのレヴェルでか?」との感を持つ程大した事の無い、「サンディ」と云う名の女に見事に袖にされた様なモノで有る。

2日経ってみると、マンハッタン各地では深刻な浸水が起きていて、例えばイースト・リヴァー沿いのハイウェイ「FDR Drive」はまるで川の様に濁激流に塗れ、アッパー・イースト・サイドの地下鉄駅も水浸しで線路はプールの様、ブルックリンやクイーンズとを結ぶトンネルには、まるで巨大な排水溝に入るが如くオニの様な量の水が流れ込み、チェルシーの画廊街に至っては膝下迄の浸水…アート作品も心配で有る。

しかし、それにも況しての大問題は「停電」だ。

月曜の夜から、ウチの窓から見えるダウンタウンの灯は全て消え去り、今も全面停電状態…聞く所に拠ると約40万世帯が停電中で、復旧の見込みが全く立っていない。

云う迄も無いが、都市生活者に取って停電が及ぼす影響は余りに大きく、全ての空港、地下鉄等が止まり、インターネット、携帯電話の充電が出来ない事、そしてそれは仕事に行けない、客が来れない事と云う事で、必然的に会社や店も休業と為り、「世界企業ニューヨーク」が心停止状態に為って居る。これはストック・マーケットも同様で、電子取引をするにしても、それをオーダーする証券会社や取引所社員が出勤出来ない為に、休場を余儀無くされたからだ。

また、ダウンタウンに在るNYU附属病院に至っては、停電後バックアップ・パワー・システムが動かず、100人以上の患者が避難を余儀無くされ、ERも閉鎖された…如何に「電気」が大都市の「心臓」で有り、「送電線」が「大動脈」かと云う事で有ろう。

その電気は、発電所から地上の送電線を通って来るのだが、しかしマンハッタンに一度でも来た事が有る人ならお分かりかと思うが、マンハッタンの送電線は全て地下に埋められている。

今回の停電の殆どの原因は、ハリケーンに拠ってマンハッタン以外の地上の送電線が切れたり、大量の水に拠る変電所の小爆発、浸水に拠ってマンハッタンの地下の送電線がダメに為った事、若しくはビルの地下に在るジェネレーターがダメに為ったからだが、「『島』都市」で有るマンハッタンの海岸線(川岸線)からの水の侵食、そして豪雨に拠る地下水の増量から、如何に送電線やそのシステムを守るかが、これからの大きな課題になるだろう…しかし、大都市は余りにも脆い。

さて、今日のニューヨークの街は空も明るく為り、恐ろしく静か…だが、そんな中筆者は、「因果応報」と云う言葉を、朝からずっと考えずには居られ無かった。

それは、昨夜から筆者夫婦が住むビルの電力の「半分」が失われたからで、だが幸いにして「半分」有るが故に、我々夫婦は今をテレビを見て情報も得る事が出来るし、インターネットも携帯の充電も出来る…が、エレベーターと水を上階迄送り出す為のポンプの電力が無い為に、シャワーが浴びれず、トイレが流せない状況なので有る。

昨日、一昨日と食べ尽くした「モノ」を、一体何処に「出せば」良いと云うのだ(尾籠な話で失礼:笑)!

結局、朝から近所のデリにトイレを借りにいき、帰りは6階迄フーフー云って階段を上がる羽目に。考えるに、これは「プレ・ハリケーン」の暴飲暴食のツケを払わされているのだ(前回の拙ダイアリー参照)…当に「因果応報」では無いか!

しかし、こんな事でメゲる我等地獄夫婦では無い(笑)。

クサマヨイと協議の結果、この「クサくなる」で有ろう地獄宮殿に居続ける位なら、以前此処にも記した、家の前に出来たNYC初のゲイ専用アーバン・シティ・ホテル「The Out」に泊まろう、と云う事に為ったので有る…まぁ、こんな機会でも無ければ、一生泊まる事も無いだろうし。

何れにしても、我等地獄夫婦を含め、「ニューヨーカー」は皆結構しぶとい。「ニューヨーカー」とはこんな状態でもお互いが助け合い、ダメなモノはダメと諦め、現状をポジティヴに捉える、下手をすると停電中でも「ダークナイト・ブラインド・パーティー」すらやりかね無い、逞しい「人種」なのだから。

どうぞご心配無く…「世界企業ニューヨーク」はほんの少し休業させて頂きますが、その内営業を再開致しますので!

そして今、筆者が出来る唯一の事と云えば、食べ過ぎに拠る「体重増加」を極力防ぐ事だけで有る(笑)。