ドグー・ジョーモン・コスモス。

今日は先ず、香港のニュースから。

昨晩、香港クリスティーズで開催された「アジア20世紀&現代美術イヴニング・セール」は、ロットで87%、ヴァリューで95%を売り、4億2040万香港ドル(約44億6500万円)を売り上げた。

トップ10リストを見ると、トップ・ロットの朱徳群の「白色森林之二」(6002万香港ドル)以下、9、10位を除けば、残り全作品が中国近代作家作品で、バイヤーは全員「Asian Private」(アジアの個人コレクター)と為っている。

日本人作家では、奈良美智の「Untitled」の722万香港ドル(約7650万円)を筆頭に、石田徹也「無題」の386万香港ドル(約4090万円)、タカノ綾「On the Way to Revolution」の266万香港ドル(約2800万円)と続いた…中国現代美術が少し弱含みだが、相変わらずの中国マーケット、と云えるだろう。

さて週末金曜は、一泊で関西出張。

その最中に、今回の日本滞在中にどうしても観たかった、MIHO MUSEUMで開催中の「土偶・コスモス」展に行って来た。

石山駅からMIHO MUSEUM迄の山路を彩る、少し靄の掛かった雨上がりの、しっとりとした紅葉が本当に美しい。結局今回も仕事で観れなかった、紅葉シーズンの京都の寺社境内のライトアップも良いが、何しろ人が多過ぎて情緒に欠けるので、少し離れた山里の大自然の中の紅葉も悪くない。

MIHO MUSEUMに着いても、敷地内の山の樹々の瑞々しさは変わらず、何時もの様に「此処まで来て良かった…」と思いながら、いざ展覧会へ。

しかし今回のこの「大土偶展」は、何しろスゴい!もう教科書や何やらで見た作品ばかりで、国宝「縄文のヴィーナス」や「縄文の女神」、各種「遮光器土偶」やハート型土偶迄、謂わば「土偶のオールスター・キャスト」で有る。

縄文人に憧れ、また母親の実家が秋田の神社で有る事から、自分を「縄文系」と信じて止まない筆者は、土偶を何時の日か手に入れようとしている事も有って、観る眼も鋭い(筈だ:笑)。と云う事で、個人的に「これはっ!」「欲しいっ!」と思った作品を幾つか挙げるとすれば、先ずは何と云っても「仮面を付けた土偶」だろう。

この土偶は縄文後期前半、紀元前2100年頃のモノで、そのガチムチ(と云うか、単にデブ)の体型が、とても他人とは思えない(笑)。この嗤った様な「仮面」を付けて、頭の後ろには面を留める紐らしき物も持つこの土偶、胸は出ていないが股間を見ると、矢張り女性らしい…当に「大地の母」で有る。

次に、重文「動物形土製品」…これは恐らく海豹かカモノハシの様な、海河の動物を象って作られて居るのだと思うが、同種の物が北海道や福島、埼玉や千葉の遺跡から出土しているらしいので、若しかしたら祭器の一種として地方伝播したのかも知れない。ブサカワな魅力溢れる逸品だ!

そしてもう1点、柳宗悦旧蔵の「岩偶」を忘れてはいけない。

制作年代は縄文晩期(BC800年頃)、岩手出土のこの半身岩偶は、体の前後や頭部の素晴らしい渦巻文様と、遮光器土偶よりもシンプルなスペーシーな顔を持つ。女性の胸は有っても、もう宇宙人にしか見えないこの岩偶だが、何と魅力的な素晴らしい作なのだろう…ウウム、欲しいっ!撫で廻したい!

今回の展覧には、柳旧蔵のこの岩偶の他にも、浜田庄司旧蔵の「『オバチャン』遮光器土偶」(笑)や、芹沢けい介(「けい」は「金へん」に「圭」)旧蔵の「『垂れ乳&顔上向き』遮光器土偶」と宗左近旧蔵の「顔付土板」、そして御本人と映った御茶目な写真で有名な川端康成旧蔵「ハート形土偶」等、「こんなの有りか?」的作品も含めた、魅力に充ちた数寄者達の愛した土偶も展示されていて、甚だ興味深い。

スター土偶達に拠る「ドグー・ジョーモン・コスモス」…筆者の縄文人の「血」をワサワサと騒がせる、エキサイティングな展覧会でした!