思わず微笑む、アートな「俳句」。

すっかり涼しく為ったニューヨーク…お陰でこの所体調が優れないが、やっと快復して来た(涙)。

そんな訳で時間が経ってしまったが、先週の火曜日は夕方から、森万里子展「Rebirth」のオープニング・レセプションに出席する為に、ジャパン・ソサエティへ。

この日はメンバー・レセプションの前に、万里子さん自身とギャラリー・ディレクターの手塚女史に拠る、解説付きの極めてプライヴェートなツアーが有り、ギャラリストのショーン・ケリーや白石正美氏、国際文化機関や財団関係者等の10名弱の中に混じって参加。

今回の展示は縄文、生と死、再生、ストーン・サークル、ブラック&ホワイト・ホール等の、人類、自然、地球、宇宙、生命、そして原初と未来をモティーフとした作品が並ぶが、常々万里子さんの髪型が縄文人、或いは記紀神話時代の日本人のそれに似て居ると感じて居た筆者は、「ヤッパリ!」と膝を打った物だ(笑)。

最初の部屋のストーン・サークルを思わせる「Transcircle 1.1」、真珠の様に光る球に向かった「108個(煩悩)」の環を持つダウジングインスタレーションの「Miracle」、そして最後の部屋のタレルを彷彿とさせる「White Hole」迄、謂わば美しい「縄文『アルタード・ステーツ』」を体感出来る展覧会を楽しんだ。

此処で話題は変わり、「ノーベル賞」…今年のノーベル平和賞は、オランダの化学兵器禁止機関「OPCW」が受賞。

巷では、パキスタンで頭を撃たれ奇跡的に回復した少女、マララさんにあげれば良かったのに、と云った声も聞かれたが、マヨンセの「貰わなくて良かったのよ!彼女はこれから、平和の為にもっと大きな仕事をして行くんだから!」の一言に激しく同意…確かに子供には「未来」が有るので、「ノーベル賞」なんか要らないのだ。

そして注目の文学賞は、カナダの女性作家アリス・マンローが受賞。「短編の女王」と呼ばれるマンロー女史は、今年82歳…今年こそ大本命と云われた村上春樹氏は、未だ64歳だからそんなに急ぐ必要も無いだろう。

が、もう10年近くも「最有力」と言われ続けて居る村上氏…敬愛する島田雅彦氏の様に、「ノーベル文学賞落選全集」でも出版すれば、再びミリオン・セラー間違い無しだろうし、序でにその別冊として、ここ数年村上氏が受賞した時の為に毎回有識者達が書いたで有ろう、お祝い文や批評文も掲載する位のユーモアのセンスが有れば、次回は確実に受賞出来ると思うのだが。

と云う事で、今日のダイアリーは「文学」繋がり。個人的に知り合いでも有る、或る新人女性俳人の句集を紹介したい…内村恭子の処女句集「女神(Venus)」(本阿弥書店)で有る。

さて「個人的知り合い」と上に書いたが、本句集の著者の恭子さんは、実はクリスティーズ・ジャパンの社員で、筆者とはもう20年間同僚付き合いをして居る、知的でユーモア溢れる女性だ。

その恭子さんが俳句を始めた時、そして出張で東京に行く度に彼女が俳句にハマって行ったのを覚えて居るが、句集を出版出来る迄に為ったとは正直驚いた。が、この句集を読み終わった今、筆者のその「驚き」は即「称賛」へと姿を変えたのだった!

在り来たりの表現しか出来ないのが悔しいが、筆者が思うにこの句集、そして恭子さんの作る俳句は、当に恭子さん「その物」で有る。それは彼女が俳句に鏤めた、持ち前の軽いユーモアや大好きなアート達、旅先での一寸した色や匂いから「彼女本人」が蜃気楼の様に浮かび上がるからで、非常に個性的な「アート語感」と親しみ易い「軽さ」に、読む者(特にアート好き)は思わず微笑んで仕舞うのだ。

此処で、本句集に収録されて居る、筆者が特に好きな「アート」な句を幾つか挙げてみたい。


乾隆のからくり目覚む梅雨の夜
春の塵アレキサンドリアの古書に
ヴィーナスの指から乳へ蜘蛛の糸
オキーフの骨白々と夏来る
夢二忌や女の化粧瞳より
フィルム・ノワールセーヌ左岸の霜夜
ブラッドベリ加はりてより銀河濃し


上には「アート」な句だけを記したが、これから俳人として益々活躍するに違い無い恭子さんのこの「女神」には、他にも新しい感覚の、美しく楽しい俳句が沢山所載されて居るので、是非ご一読頂きたい。

てな訳で、今日は恭子さんのこの句でお仕舞い。


「後味の良きブログなり日向ぼこ」


◎筆者に拠るレクチャーのお知らせ

●「特別展 京都 洛中洛外図と障壁画の美ー里帰りした龍安寺襖絵をめぐって」

日時:2013年11月16日(土):15:30-17:00

場所:朝日カルチャーセンター新宿教室

サイト:http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=220110&userflg=0

問い合わせ:朝日カルチャーセンター新宿教室(03-3344-1941)迄。


奮ってご参加下さい!