お茶の新年。

しかし、山本太郎参院議員が今上天皇園遊会で手紙を渡した件、一体何が問題なのか、況してや「政治利用」だの「議員辞職勧告」に至っては、全く意味が分からない。

云って置きたいが、筆者は天皇陛下を日本には無くては為らない方だと考えて居るし、天皇制も存続させねば為らないと考えて居る。その上で、日本の国会議員が今上天皇に手紙を手渡してはいけない、と云う理由が分からないのだ。

先ず天皇陛下は人間で有られるから、如何に立場が違うとは云え、人間が人間に手紙を渡す権利が有るし、渡された方が受け取りを拒否する権利も当然有る。そして天皇陛下は、国民主権を謳う憲法上の国民の象徴で有るから、如何なる国民にも手紙を渡したり声を掛ける権利が有るし、国民に選ばれた国会議員も当然同じで、その上でそれを拒否するも受けるも陛下次第で有る。何処かの木っ端議員が思う様に「失礼だ」と陛下が思われたなら、陛下はお受け取りに為られ無かっただろう。

そして、曲がりなりにも陛下がお受け取りになった、国民に選出された国会議員が書いたその手紙に関して、それこそ一介の総理大臣や議員風情がとやかく言う事自体がおかしい(世が世なら、打ち首じゃ:笑)。

が、陛下が心から国民の事をお考えになって居られる様には、首相や何処かの議員は我々国民(或いは福島)の事を考えて居ないだろうから(考えていたら「undercontrol」等とは、決して云えない)、我々の手紙は決して受け取らないだろうし、況してや「福島」に関しての物なら尚更だ。

そして、この事件を「天皇制」云々や「政治利用」等と結びつけるのは、それを云っている特に自民党議員達の「福島問題からの逃避」と「責任逃れ」にしか思えないし、自分達が主権回復式典等で散々政治利用している癖に、全く以って片腹痛い。

因みに安倍総理は、「福島がアンダーコントロールされて居る」とIOC総会で世界の民に嘘を吐いた事、そして事態が一向に改善されて居ない事を、陛下にきちんと「奏上」して居るので有ろうか?

「怖くて出来ない」癖に、ジェラシーだけは立派な日本の政治家には本当に呆れる…こんな小事に文句を云う暇が有ったら、さっさと福島をフィックスしろってんだ!

と怒りながらも、アッと云う間に11月に為ってしまった。今年も後1/6しか残っていない…一体どうする?(何を?:笑)

と、焦り満点の此方はと云うと、来年3月に開催予定のアジア宗教哲学美術をフィーチャーした特別セール「The Sublime and the Beautiful: Asian Masterpieces of Devotion」の準備に追われっ放し。

このスペシャル・オークションは、クリスティーズ・ニューヨークのアジア美術3部門の合同企画で、仏教・神道ヒンズー教チベット仏教ガンダーラ道教等のマスターピースを集めてオークションを開催する企画で、出品数もハイ・クオリティ作品20点程に限定し、カタログも各方面からのエッセイを載せた凝った物を作る予定。その中の数点は、今月末の香港オークションの下見会上で展示される予定なので、乞うご期待頂きたい!

そんな中、水曜日の夜は何年振りかにテレビに噛り付いて、「野球」を観た。

それは、ボストン・レッドソックスセントルイス・カージナルスの「ワールド・シリーズ第6戦」だったのだが、結果はレッドソックスが何と95年振りに地元でワールド・チャンピオンと為り、その瞬間マウンドに立っていたのは、元巨人の上原浩治その人で有る。

上原投手の事は、巨人時代から「全く巨人の選手らしく無い」所が好きだったが(筆者は昔から、巨人と二子山部屋が嫌いだ)、4年前に大リーグに来てから地道に活躍して来た、その努力が実った事が嬉しい。

野球を一度でもやった事の有る人間ならば、「大リーグに行き、ワールド・シリーズに出場し、ワールド・チャンピオンに為る瞬間マウンドに立ち、最後のバッターを空振り三振に取り、雄叫びを上げ、キャッチャーに走り寄り、抱き合って喜ぶ」と云う、野球人生上これ以上有り得無い、最高最大の瞬間を体験した「雑草魂」上原に、筆者は感動し大きな拍手を送った!

そして昨日は、ニューヨーク裏千家茶の湯センターでの「炉開き」にお呼ばれ。

ご存知の通り「炉開き」は「茶の湯の『新年』」なので、何処と無く晴れやかな日を期待してしまう物だが、昨日の朝は丁度去年の「炉開き」がハリケーン・サンディの為に中止された事を思い出させるかの様に、前夜からの強風と横殴りの雨…が、お茶の始まる頃には風雨は収まり、一安心する。

この日は午後の回に参加したので、後炭の点前から始まったお茶席には茶壺が飾られて居たが、何とも暖かい日だった事も有って、湯が沸き、善哉とお薄を頂いても、今一つ「炉開き」の雰囲気を感じ切れなかったのが残念だったが、季節や自然は中々人の思い通りには行かない物で、其処が面白いとも云える。

「炉開き」のお茶を楽しみ、食事をし、季節的気分転換を実感して家に帰ると、日本から届いた「お茶の新年」のタイミングにバッチリな雑誌に眼を通す。

それは「芸術新潮」の最新号(11月号)。

今回の特集「利休と名碗」は、茶人千宗屋氏に拠る監修に因って、非常に美しい出来映えと為っ居て、利休直系の千氏に拠る利休や桃山陶の分析や、林屋晴三氏や楽吉左衛門氏との対談等の読み応えの有る文章と共に、国宝大井戸茶碗「喜左衛門」、国宝志野茶碗「卯花墻」や長次郎の重文「大黒」、そして光悦「乙御前」、瀬戸黒「大原女」等の桃山期から、川喜田半泥子加藤唐九郎、金重有邦等の近現代迄の、新たに撮影された名碗達が掲載されて居るが故に、隅から隅迄見逃せず、トイレに持ち込んで迄読み耽けざるを得ない(尾篭な話で失礼…:笑)。

そしてこの特集号を読んだ、今月半ばに日本に飛ぶワタクシとしては、現在東京で同時開催されている、根津美術館「井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ」、三井記念美術館「国宝『卯花墻』と桃山の名陶」、五島美術館「光悦ー桃山の古典」、そして菊地寛実記念智美術館「現代の名碗」(マヨンセの祖父の碗も)の、「茶碗」に関する4つの展覧会を観に行くのが待ち切れ無い!

また、事の序でに宣伝させて貰えば、筆者が連載中の女性ファッション誌「Dress」12月号(11月1日発売)内のコラム「アートの深層」でも、この根津美術館の「井戸茶碗」展を取り上げて、恥ずかしながら筆者が想う井戸茶碗の魅力に就いて触れているので、ご一読頂ければ幸い。

「お茶の新年」は終わったが、所謂「新年」迄は後2ヶ月…そして天気予報を見ると、ピクニックを予定して居る明日の予想最低気温は、摂氏2度。

今晩、ニューヨークは漸く「冬時間」に入る。


◎筆者に拠るレクチャーのお知らせ

●「特別展 京都 洛中洛外図と障壁画の美ー里帰りした龍安寺襖絵をめぐって」

日時:2013年11月16日(土):15:30-17:00

場所:朝日カルチャーセンター新宿教室

サイト:http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=220110&userflg=0

問い合わせ:朝日カルチャーセンター新宿教室(03-3344-1941)迄。