恋とは「超常現象」で有る:「Magic in the Moonlight」。

昨日日本に着いた。

NYを出た水曜日の朝の気温は、何と華氏23度(摂氏マイナス5度)!もういきなりの氷点下生活から抜け出した僕は、ラッキーとしか云い様が無い。

そして到着した日本では、来月選挙が有ると云う。が、我々の税金を700億円も使って、一体何の為の選挙なのだろう?訳が分からないが、一先ずは「秘密保護法」、結果マイナス成長な「アベノミクス」や「集団的自衛権」…現政権に審判を下すチャンスだと云う事にして置こう。

さて今日は、今回の来日機内で観た2本の映画に就いて…先ずは、6歳から18歳迄の「12年間」に渡る少年の成長を描いた、「6才のボクが、大人になるまで」(原題:「Boyhood」)。

監督は「ビフォア・サンセット」のリチャード・リンクレイター、主演は少年の両親役にイーサン・ホークパトリシア・アークエット、そして主人公の少年メイソン役はエラー・コルトレーンだ。

何しろこの作品は「フィクション」で有るにも関わらず、同じ俳優達を実際に12年間掛けて撮り続けた為に、一種ファミリー・ドキュメント的なタッチを持った稀なる感覚の作品と為って居る。

12年間と云うのは短い様で長く(干支一廻りなのだから!)、イーサン・ホークの「オッさん振り」が進むのも見処だが(笑)、両親の離婚に始まり、家族の運命に翻弄されながら成長する一寸暗目なコルトレーンの成長振りが、この12年間のアメリカの社会情勢と共に良く描かれて居て、「あんな子供が、実際アメリカには数多く居るに違いない」と、観る者に強くリアリティを思わせる事に成功して居る。

そして「『運命を受け入れる=諦める』だけではない」と最後の最後で観客に伝える本作は、ベルリン映画祭で金熊賞にノミネートされたが落選、然し監督賞を受賞、シアトル国際映画祭では作品賞・監督賞・主演女優賞を獲得して居る。「思春期」と云う旅を描いた、優れたロード・ムーヴィー…必見の作品だ!

そしてもう1本は、ウディ・アレンの新作「Magic in the Moonlight」で、本作はコリン・ファース扮する天才魔術師と、エマ・ストーン扮するインチキ霊媒師のロマンティック・コメディー。

ネタバレに為るので詳しくは書かないが、この「如何にも」ウディ・アレン好みの主題を演ずるファースとストーンの演技は中々ヨロシイ…が、脚本が正直イマイチなのだ。

インチキ降霊会のトリックもパッとしないし、恋の結末のシーンも在り来たりで残念…だが、「恋」と「心霊現象」を同列に扱うテーマには、僕は何とも深く共感したので有る。

アレンの描く男女関係は、「アニー・ホール」「マンハッタン」から始まり、大好きな「マッチポイント」「ヴィッキー・クリスティーナ・バルセロナ」迄、自分の身に起きそうな位超リアルなのに(本当に起きたら最悪だけれど:笑)、極めて神話的でも有る処が凄い。

そもそも「恋」等と云うモノは、イマジネーションが無ければ出来るモノでは無いし、それが無ければ面白くもクソもない。

何故なら、男から見れば「地球上の人智・科学では到底理解・解明出来ない生物」で有る処の「女性」と云う存在に対し、或る日突然、然もその原因も判然としない侭「落ちてしまう『穴』」(本当は「陥る」、抜き差しならない状態に為る、の意らしいが)…それが「恋」なのだから!

それともう一つは、この作品でアレンが描く様に「降霊会なんてインチキでも良いじゃないか…騙される方が幸せなら」と云う点で有る。

この点もまた然り…騙し騙されの恋の駆け引きは、「騙すより騙された方が良い」と云う人生の鉄則に準ずるし、況してや騙されて居る間が幸福だったならば、その美しい想い出に生きる方がナンボか前向きで有ろう(笑)。

「恋」とは、科学では決して証明出来ない「超常現象」で有る…50を過ぎた僕に今一度その事を思い出させて呉れた、アレンの新作でした。