「絶間姫」と「マロンちゃん」の誘惑。

日本も寒くなって来た。

仕事の方もVIP顧客達とのミーティング、ランチやディナーが続き、美味しい物を頂き続けながらも体重を気にし始めたのだが、今となっては「『ロー・カーボ・ダイエット』って何だっけ?」ってなレヴェルで、我ながら情け無い(涙)。

そんな中、時間を見つけては展覧会を廻る…先ずは日本科学未来館で開催中の、「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」へ。

日本初個展らしい今回のチームラボの展覧会は、現在ニューヨークのジャパン・ソサエティでも展覧中の、若冲の有名作「花木鳥獣図屏風」をモティーフとした代表作「Nirvana」等を始めとする、アートとテクノロジーの間を行き来する体験型の物。

寒風吹く中「ゆりかもめ」で向かったお台場駅で降り、ゴーストタウン並みに人気の無い道を歩いていると不安に為ったが、未来館に着いてみると、入場券売り場には外人や親子連れで列が出来ていてビックリ!

券を買い暖かい館内に入ってみると、来場して居た大勢の子供達も作品を十二分に楽しんでいて、「デジタル・ワールドと教育」と云う面でも非常に興味深かった…と同時に、「テクノロジーの進化=アートの進化では無い」と云う事を再認識した展覧会でも有った。

そんな昨日、久々に実家に寄って母親の手料理を食べた後は、歌舞伎座へと向かう…「十二月大歌舞伎」の夜の部、「通し狂言 雷人不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」を観る為だ。

今月は海老蔵が「5役早替わり」をすると云う事で、歌舞伎座は相変わらずの「海老様」目当ての女性客で一杯…が、今回の「通し狂言」では、「雷神」「毛抜」「不動」の3演目が一度に楽しめる演出と為って居る事、その上何と云っても玉三郎が「絶間姫」を演じると云うのだから、見逃せる訳が無い。

そして、初めて見た「人形」に拠る口上で始まったこの狂言海老蔵も相手が玉様だからか気合い十分で久々に素晴らしく、大変楽しめる素晴らしい出来で有った…が、最後の「不動明王」が出てくるシーンは、ハッキリって要らない…ラスベガスのショウじゃないんだから。何故、早雲の死で終わらなかったのだろうか?

とは云え、今回の海老蔵は、彼の持つ本来の華と敵役で魅せる「悪の華」、豪快な見得とコミカルな演技、どれを取ってもここ数年の海老蔵では一番良かった!

その上矢張り、何と云っても大和屋が「神的」に素晴らしい(月並みな言葉しか出ないのが、もどかしい)。文字を空で綴る「指先」や、雨を降らせる為に注連縄を切る時の「眼」、嫋やかに魅せる枝垂れた「背中」…何処を取っても、何度観ても、この役者は本当〜に凄い。

そりゃ、宮中最高の美女の「雲の絶間姫」の役だから当然かも知れないが、鳴神上人ならずとも、どんな朴念仁だろうが聖職者だろうが、この「玉三郎の」絶間姫の色仕掛けを拒絶する事は出来まい…。

さてこの「鳴神上人」と云う演し物の教訓は、単純に「女の誘惑には気を付けよ」と云う事だろうが(笑)、僕にはそんな色っぽい話は縁遠い…が、最近僕を苦しめ続けて居る、絶間姫級の美女以上の「誘惑」が有る事を告白せねば為らない…それは「マロンちゃん」で有る。

因みに「マロンちゃん」とは、何処かのキャバクラに居る、巻き髪のお姉さんの事では有りません…「栗」を使ったお菓子やデザートの事なので、悪しからず(笑)。

今回来日して以来頂いた、「栗」や「和栗」が豊富な我が国の才能溢れるパティシエ達が創るマロン・デザート…例えば顧客や友人、編集者等と訪れたOやCの「マロン・パフェ」やPの「マロン・シャンティ」、代官山のレストランAがやっている青山Pの「モンブラン・クレープ」、武蔵小金井駅前の和菓子屋「龜屋」や「たねや」、鳩サブレーの「豊島屋」が出して居る栗和菓子、行きつけイタリアン各店のマロン系デザート(幾つかの店では、今年もう売り切れで、「桂屋さん、また来年!」等と云われ、大ショックだった…)迄、もう食べた、そして食べたい「マロンちゃん」は枚挙に暇が無い。

「♬『ロー・カーボ』って何だっけ、何だっけ…?栗と和栗の有る店さ〜♬」とさんまの様に口遊みながら(古いね:苦笑)、今日も桂屋上人は「絶間姫」為らぬ「マロンちゃん」の誘惑に負けて行くので有った…(涙)。