アートと建築の展覧会巡礼。

イスラム国に拉致され、人質に為って居た2人の日本人の内の1人が殺害された模様…然し首相・日本国の「イスラム国」人質事件対応は、全く以って意味不明で有る。

「テロには屈しない」の舌の根も乾かない侭、今度は「人命優先」と云う…180度完全に相反する此れ等の発言で錯綜して居る間に、アッサリと1人が殺害されて仕舞ったのは、生き残って居るジャーナリストで有るもう1人の人質がビデオ内で読まされて居る様に、明らかに総理・国の優柔不断さの所為で有ろう。

何れにせよ、自身が極右の癖に「日本と日本人には『テロ』等起きる筈が無い」とタカを括っていた筈の平和ボケ総理には、日本国民の命が危険に晒されて居る訳だから(国家の最大義務は、国民の生命の堅持だ)、悔しかったら自身が先頭に立っての自衛隊派兵をし、奪還作戦でもやる位の根性を見せて欲しい…まぁ、そんな根性も無いだろうが。

そんな怒りと疑問を抱えつつも、平和な此方の先週末は展覧会三昧。

先ず土曜日は、根津美術館で開催中の「特別展 動物礼讃展」から…此方は「羊年」に因んで羊を始めとする動物をモティーフとした工芸・絵画約70点を集めた展覧会だ。

館蔵作品や泉屋博古館からの青銅器等の名品が並んで居たが、然し本展の目玉は大英博物館からの大名品「青銅双羊尊」…この作品は、根津美術館所蔵の重文「双羊尊」の同時代作と思われる兄弟的名品で、この2点が並ぶと壮観!

古美術の後は現代美術と云う事で、その後向かったのは国立新美術館で開催されて居た「17th Domani−明日展」…此方は文化庁の「芸術家在外研修制度」に拠って派遣された12人のアーティスト達の展覧会だが、その中で個人的に一際際立って居たのは、青木克世と岩崎貴宏だった。

青木の作品は海外でも評価が高く、特に頭蓋骨「Predictive Dream」は僕の顧客にも欲しい人が居る程だが、デカダンでデコラティヴな「鏡よ鏡」等の作品も素晴らしい。また岩崎作品は昨年ニューヨークのギャラリー「Freedman Benda」でも展覧されたが(拙ダイアリー:「Duality of Existance-Post Fukushima」参照)、日本工芸的な細密且つ繊細な魅力溢れる「アウト・オブ・ディスオーダー」が眼を惹く。

乃木坂を後にすると、今度は久し振りの「白金アート・コンブレックス」へ…3軒の現代美術ギャラリーで現在開催中の展覧会は、各々見応え満点!

児玉画廊の竹村文宏の展覧会「Factory」の作品群は、地図を思わせるアクリル・オン・キャンバスだが、絵の具だけの構造体を使った「立体的な絵」。観る者の前面に迫り出すタワーや飛行機等、通常鳥瞰する目線を壁に向ける空間感覚が新鮮だ。また1階上のアラタニウラノで開催中の多田友充「ぼくは描くことができる」では、一寸ドイグを思わせる鮮やかな色彩で描かれた大画面作品が並ぶ。

そして3F山本現代でのできやよいの個展「旅行♪」は、作家のご主人で有る写真家とのコラボ写真集の出版を兼ねての物。錯視立体作品を含む展覧会だが、素晴らしいかったのはカラフルな平面作品「国旗」シリーズで、狂った様にスタンピングされた無数の「顔」が色彩感覚豊かにグラデーションを作り、フランスやセイシェルの国旗をイメージする美しい作品…ウーム、欲しい!

そしてこの日の僕の展覧会巡礼のトリは、乃木坂のギャラリー間で始まった「TANGE BY TANGE 1949-1959 丹下健三が見た丹下健三」展。

この展覧会は、写真をこよなく愛した丹下健三が1950年代を中心に撮影した自身の作品、古建築のコンタクト・シート約70点を展示し、丹下自身が書き込んだトリミングの線を見る事に拠って彼の眼を確認する試み。丹下が亡くなって丁度10年を迎える今年は色々なイヴェントが企画されるだろうが、その第1弾としての本展では丹下の建築家としてのセンス、そしてその眼を再確認出来る。

此処で観る日本近代建築の巨人丹下健三の若かりし頃(36〜46歳)の代表作と云えば、例えば広島平和会館原爆記念館陳列館(戦後建築初の重文)、旧東京都庁舎や今治市庁舎が挙げられるのだろうが、個人的には原爆記念館陳列館の翌年に建てられた丹下の「自宅」が可成り素晴らしい。陳列館と共に正倉院を思わせる高床式建築風な丹下邸は、ル・コルビュジエの住宅の持つ開放感を思わせながらも、和風モダニズムを追求した傑作だと思う。

さて丹下作品と僕の接点は、山口県立萩美術館・浦上記念館や横浜美術館赤プリ新館やハナエ・モリビル、草月会館等幾つか有るけれど、最も深く関わり足繁く通ったのは母校立教大学の図書館だ。

一夜漬けの勉強や優秀な学生のノートを廻し読みする為、或いは大好きだった映画表現論やパリ・サロン学の資料を探す為に訪れた図書館は、図書館独特の香りと共に僕の記憶に深く留まって居る。

古美術と現代美術、そして近代建築に触れ、その上学生時代の思い出迄も蘇らせて呉れた先週末の「巡礼」と為りました。