老婦人コレクターとの近況。

9月25日(日)
7:00 大阪で起床後、新幹線で東京に戻る道中、リオ五輪閉会式に於けるリオから東京への「五輪引き継ぎ式」パフォーマンスを初めて観て驚く…これは僕が渋谷のシアター・オーブで観た、シェルカウイ&ジャレが振り付けを担当し、ゴームリーが舞台美術を担当した(これが僕が観に行った最大の理由だったのだが…:拙ダイアリー「結界と境界」参照)パフォーマンス、「バベル」の「完全な『パクリ』」で有る。演出家は恥を知るべきだ。然し、東京オリンピックに関わる「全て」がダメじゃないか!矢張りもう返上した方が良い。

13:00 友人のアーティストと、表参道でパスタ・ランチ。久し振りの美味いパスタをエンジョイしたが、向かいの席に座って居たオサレ系のカップルが、入店から退出迄携帯を「一時も」手から離さず何かを検索して居た事に、イライラする…こんな美味いパスタが目前に在るのに、携帯弄り倒して一体何が楽しいんだろう?

15:00 最近リニューアル・オープンした恵比寿の東京都写真美術館にて、開館20周年記念展「杉本博司 ロスト・ヒューマン」を観る。本展はパリのパレ・ド・トーキョーでの里帰り展だが、内容がシニカルの極みにも拘らず、会場が超満員でビックリ。芸術的ハイ・リテラシーが必要な展示内容は凝って居て面白いし、新シリーズ「廃墟劇場」も迫力が有るが、若い人達(特にアーティスト)が本展を観てどう思うか、聞いてみたい。

16:30 原美術館に向かい、篠山紀信展「快楽の館」を観る。正反対・好対照な2人の写真家の展示を1日で観るのは初めてだが、こうなると「何がアートで、何がアートに必要なのか」が判然とする。然し本展は、唯単に美術館オーナーの為の展覧会では無いか?とも思える(笑)。

19:00 2つの展覧会からの退廃とエロスを引き摺り乍ら、学生時代から通って居る麻布十番焼肉屋「E」で、友人と食事。最近の肉ブームでオサレな焼肉屋が増えたが、老舗の韓国系焼肉店は美味いのに空いている。嗚呼、大満足!


9月26日(月)
12:00 久し振りに会う母親と「K」で寿司を摘む。元気そうで安心する。

14:30 美術倉庫に向かい、某美術館所蔵の日本美術品の査定を行う。倉庫では15〜20年前、嘗て僕が東京勤務だった頃に良く一緒に仕事をして居たディーラーがその美術館の嘱託と為って登場し、ビックリ…再会を喜び合う。良い仏画が有った。

18:00 銀座のSpace TGCで始まった、舘鼻則孝・桑田卓郎・佐藤允の3人展のレセプションへ。これは、最近小山登美夫ギャラリーから独立した金近君の展覧会…ギャラリストもアーティストも、これからが楽しみ。

20:00 友人と代官山「A」でディナー。大好物のガスパチョが何と未だ有って、踊り出さんばかりに喜んでオーダーする。冷たいガスパチョの中に横たわる、アツアツの鰯…あぁ、至福、いや悦楽とはこの事。


9月27日(火)
11:00 業者の顧客の所で、或る肉筆浮世絵を観る…が、真贋が気に為り過ぎる。これは調査せねばなるまい。

12:30 銀座の行きつけの洋食店「G」でランチ。暑いので今月末迄やって居ると云うパリソワと、何時ものハンバーグを食べ、ご飯は我慢するが、デザートに「マロンちゃん」が有ると聞き、ダブルで頼んで仕舞い、ジャマイカ人に為って仕舞う(じゃあ、まぁ、いいか:笑)。

14:00 オフィスにて、某美術館の準備室長と打ち合わせ。オススメしたい作品が色々と有り、これこそプライヴェート・セールの醍醐味…今後が楽しみ。

19:00 荷物が有ったので一度帰宅した後、友人との食事の為、白金の鰻屋「F」に向かうが、タクシーを降りる段に為って、財布を忘れて来たのに気付く…大騒ぎした末友人に代わりに払って貰ったのだが、その直後カバンに銀行から下ろした現金を持って居た事に気付く。こう云う忘れ方に、自分が老人に為った気がして、吐きそうに為る。が、鰻は矢張り美味かった(笑)。


9月28日(水)
11:00 神保町で某展覧会図録を必死に探すが、中々見つからずギブ・アップし、結局近所の中華「K」でランチ。この「K」は嘗て孫文が隠れ住んで居た店で、神保町がその昔中華街だった名残を感じさせる名店だ。

20:00 韓国人の奥さんの転職の為に、最近会社を辞めたアメリカ人同僚Pがシンガポールに移住する旅の途中、その奥さんと東京に寄ったので、神楽坂の弟の店「K」で食事をする。このPはクリスティーズ・ニューヨークNO.1の洒落者で、僕が思うにファッション・センスに於いて彼の右に出る者は居なかった。新天地での2人の成功を祈りながら、季節に料理に舌鼓を打つ。


9月29日(木)
9:00 のぞみに飛び乗り、岡山へ。今日から3日間は、岡山県美で始まった玉堂展に出展して居る、超重要顧客Cさんとの旅。

13:00 Cさんとホテルのロビーで待合せ、迎えの車に乗り、長年家族ぐるみのお付き合いをして居る備前焼陶芸家K氏のお宅へ。先ずはお抹茶を頂くと、工房や登り窯を見学したり、茶室を拝見したり。その後は轆轤を廻して貰って、Cさんが陶芸体験…陶芸家はスイスイとやって居るが、これが何とも難しい(笑)。

16:00 K氏に誘われ、姫路在の近現代インド美術のコレクターF氏を皆で訪ねる。事業を引退されたF氏に美術館に改造された倉庫や素晴らしいご自宅を案内頂き、その後連れて行って頂いた料理店での食事も、これでもかの量で大満足…大変ご馳走になりました。


9月30日(金)
9:30 Cさんと共に、岡山から京都へ。然しCさんとの旅は楽しく、それは70代のCさんが非常にポジティブな性格だからで、アートや政治(大統領選!)を語りながらの旅はこの上ない。

11:30 京都に着きホテルに荷物を預けると、早速新門前へ。幾つかの骨董屋さんで書や浮世絵を観る。が、矢張りCさんの名前は強力で、彼女の名前を聞いた途端、骨董屋さんが緊張するのが判る…そりゃ、そうだ(笑)。

13:30 新橋通の「P」で、担々麺ランチ。Cさんは黒担々麺初体験だったが「オイシイ!」を連発、年を取っても初めての食べ物や行動を躊躇しない、Cさんのこの飽く無き好奇心を僕は心から尊敬する。

15:00 食後再び骨董屋さんを巡った後は、細見美術館で開催中の展覧会「京の琳派ー美を愉しむ」へ。Cさんのお父さんのコレクションには、光琳や抱一と云った数展琳派作品が有るが、水墨画がメイン…この日本絵画の「両輪」に就て、お互い話乍ら観覧する。

19:00 木屋町の行きつけ「H」で食事。陽気な大将がCさんに「これは食べられまっか?」とチャレンジするが、Cさんは悉く平らげ感心される。目板鰈の唐揚、汲み上げ湯葉、芋茎、鱧等のお造り、茄子田楽、鯛茶迄を完食…嗚呼、京都って、やっぱりパラダイス。

22:00 ホテルに戻りニュースを見ると、防衛大臣が国会答弁で攻められ涙ぐんでいる…ったく、君は子供か?国会で攻められた位で涙する大臣が、国を守れるんか?そして、オリンピックの大超過予算も然り…3兆円超だと?こんな酷いレヴェルの見積りを出したら、普通の会社だったら即刻クビですよ、クビ。ったく、森喜朗始め、此奴等一体誰の金を遣ってると思って居るのだ?ムカつき過ぎて、折角の京都の夜が台無しに為る。


何と今日で9月も終わり!そして明日は、CさんとMIHO MUSEUMへ…空気が綺麗な気の良い場所で、リフレッシュしよっと。


−お知らせ−
*10月17・24・30日の3日間、渋谷のアップリンクにて、僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務めた映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://archive.j-mediaarts.jp/festival/2014/art/works/18aj_Searching_for_Eur-Asia/)が上映されます。本作は最近「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞、各日上映後には畠山直哉國分功一郎森村泰昌の各氏と渡辺監督のトークが有ります。奮ってご来場下さい!詳しくは→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014

*10月29日(土)15:30-17:00、朝日カルチャーセンター新宿にて、「海外から見た禅画・白隠と仙突」と題されたレクチャーをします。詳しくは→https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/704962b9-c35e-e518-3c8a-57a99c63c4e2

*12月16日、19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf